第6章 思い出
「岩中興業って知ってますか?」
一階のロビーのソファーであたしと渡辺さんは話していた。
「いいえ。」
「地元じゃ有名な金貸しなんスけど、そこはヤクザ直属の金貸しなんです。」
「それと極使天馬と何の関係が?」
「俺等暴走族ってのはもともとヤクザにみか締め料払わないといけないんっス。だから、この辺の族はみんな岩中興業に払ってきました。」
そこまで言うと、彼は真剣にな顔になった。
「けど、先代の総長は違った。」
「それって上田さんって人ですか?」
「はい。先代の総長は岩中興業に一切みか締め料払わなかったんです。」
「え?なんで?」
「お前らの言いなりにはならないって、自分の力でのしあがっていくって。けど、岩中興業はよく思わなかった。だから…極使天馬を潰しにかかったんです。」
「けれど、先代の総長は一人で奴らの所へ乗り込んだんです。そして…。」
ゴクリと息を飲んだ。
「全員ぶった押した。今の総長達は遅れて来たんス。けれど遅かった。総長は、奴らのトップが気を失う間際に撃った弾が頭に当たって即死だったそうです」