第1章 2人の距離
そして進入して最初に目についたのはまさかの物だった。
突然の来客に対応できなかったのかキャリーケースから洋服を出してしまう筈だったのかベッドに畳んで置かれてて。
その一番上に下着が置いてあった
そんな事に気付かない由梨ちゃんは突然の来客に、とりあえずコーヒー飲みますか?と聞いてくる
ブルーの下着って…
意外と派手だな。とかちょっと笑いそうになるのを抑え込みソファに座りゲームをしているとテーブルに淹れたてのコーヒーを置いてくれたので、ありがとう。と一口もらった
いや、まて
俺ここにゲームしにきたんじゃないよな
由梨ちゃんのなんともいえないまったり感に流されそうになったけど床に座る姿を見て思い立った
「由梨ちゃん。…手見して」
両手をとり手のひらを見るとやっぱり少し赤くなっていた。
それを見て少し心が痛む
やっぱりあれだよな
DVってやつかな
直接聞くほど仲が良い訳ではない
それでも心配してしまうのは由梨ちゃんの普段とのギャップがありすぎて無理してんじゃないかとか考えてしまう
しばらく考え込んでると視線を感じた
目が合って、あぁ。ごめんね。と離し、こっちどうぞ。と隣をポンポンと叩くと控えめに離れて座った
暫く考えたけどやっぱり心配だったので直接的な言葉は使わないようにして聞いてみた
「…。今日はさ。大丈夫だったのかなって。」
なんのことかわからないという顔をして俺を見るから出来るだけしっかり見つめると言いたかったことに気づいたみたいで少し目を大きくしてその後突然ブルブル震えだした。
「…あ、えっと。……その」
震えながらも必死に何か言おうとする由梨ちゃん。
その姿を見て確信してしまった。
やっぱりそうなんだなって。
あたりをキョロキョロして慌てる由梨ちゃんがどうしても見ていられなくてそこら辺にあった膝掛けでそっと包み込んだ
「由梨ちゃん。…ごめん。なんか俺が虐めてるみたいだな」
それでも震えが止まらない。
どうしようかと思ったけど気づいたら毛布越しに抱きしめていた。
ふわっと香る由梨ちゃんの匂いは甘すぎず。
優しい匂いがした。
それがどうしようもなく心地が良くて。
それに抱きしめた時のこのサイズ感がなんともジャストサイズな気がした。