第1章 2人の距離
「あ、あの。」
暫く抱きしめていたら控えめに声を出す由梨ちゃん。
まだ離れたくないと何処かで感じながらも少し離れ、寒くない?と聞くと、あ、はい。…お陰様で。と微笑んできたので安心して離れて座った
暫く何も話さなかった。
それでも息苦しさとかは感じなくて寧ろ居心地が良かった。
「由梨ってさ。…いーな。サイズが。」
暫くしてからそう言うと由梨は少しフリーズしていたのでフフッと笑って持っていたゲームを開いた。
多分呼び捨てで急に話しかけられたので対応できなかったんだと思う。
その反応が見たかったものだったから満足した。
やっぱり面白いな。
その後は撮影までの間由梨の部屋でゲームしながら過ごした。
たまにお菓子とか持ってきてくれたりする程度で特に俺がいる事に触れないあたりは拒否されていないと思う。
実際俺自身は居心地が良いから部屋から出ていかない訳だし。
何だか由梨との空気感がゆったりしていて今までに味わったことのない心地良さだった。
その日の撮影は少しだけだったので無事に終わり夕食まで時間ができた。
また由梨のところで入り浸ろうかなとか思ってたら翔くんから早めに行かないかと誘われた
「早めに行ってさー。ビールでも飲まない?」
ビール飲みてー。とおっさんばりに呟く彼にフフッと笑いながら、同じくですな。と同調した。
実際。飲みたいです。
仕事後の酒はもはや当たり前となってる。
「あー。そしたらさ、由梨も誘っちゃうかー。」
どうよ?と聞くと、あー。そうだねー。とどっちでも良さそうな返事だったので先に向かってもらい俺は由梨を呼びに部屋に向かった
扉をノックするとゆっくりと開きそこには泣き腫らしたであろう由梨が立っていた
「…なんて顔してんですか」
思わず出た言葉がそんなでそれに対して苦しそうに笑う由梨
涙を拭った跡があるけど少しまだ残っていてそれを指でさっと拭き取り思わず抱きしめようとした。
でもできなかった
「あ、…あの。ごめんなさい。」
少し後退りして言う由梨は今完全に俺を拒否している
キュッと胸が苦しくなる気がしたけど抱きしめようとしていた腕を下ろした