第5章 2人の距離 5
「まぁ、でも。俺が今の所一歩リードかな。」
由梨の唇をそっと撫でながら言うとじっと見つめてくる由梨
その顔は明らかに誘ってるもので。
その雰囲気に飲まれそうになりながらもゆっくりと近づき重なり合う唇
少し離れるともっとという風に由梨から重ねてくる唇は熱を帯びていて
何度も確かめるようにキスをした。
これ以上してしまったらもう先に進んでしまいそうで名残惜しむように最後にチュッとリップ音を鳴らして抱きしめた。
おやすみ。と言い目を瞑り寝たふりをする
そしてまた今日も由梨が夢の世界へ入って行くのを待ってからベッドから降りた
トイレから出て来てリビングに向かい例の棚の前に立ち止まる
「俺、馬鹿だよな。…拒否されるのが怖くて。お前の母ちゃん貰うつもりなのに。待つとかかっこつけてるけど本当は怖いんだよ」
ボソッと思わず独り言のように呟いてしまう
タバコでも吸おう。と思いベランダに出た。
由梨のマンションから俺の家も見える。
はぁ。と溜息を付いていると携帯が鳴っているのが見えた。
それはマネージャーからで明日の入りの時間変更だった。
ついでだから社長は明日何処にいるのか聞くと事務所にいるはずだと言うので明日行くことを伝えた。
もうちゃんと言うしかない。
今の不安定なままの関係はきっと俺自身の所為もある。
しっかりと周りを固めて、それから由梨と向き合おう。
次の日。事務所に行くと相変わらず忙しそうな社長は電話やらスタッフの対応やらに追われていた。
タイミングがつかめないので社長と同じ部屋でゲームしながら待っていると、食べる?と言ってお菓子をくれるので素直に受け取り食べ始めると向かいに座って一緒になって食べ始めた
「あれ、時間あいたの?」
俺の質問に、休憩。とだけ答えて煎餅をパリッとさせながらお茶をのむ社長は相変わらず
「なに。今日なんかあってきたの?それとも暇つぶし?」
ゲームをしているだけで特に話を聞いて欲しそうでもないように見えたのかそう聞かれたのでフフッと笑った