第4章 2人の距離 4
そのあと父さんも仕事の合間に帰ってきて驚いた
「あれ、帰ってきたの」
思わずそう言うと、あぁ。とだけ答えた。
由梨は父さんに気づくとまた深々お辞儀をして綺麗に挨拶する。
すると見たことない俺には絶対見せない甘めな笑顔で由梨に対応する父さんをぽかーん。と見ているといつの間にか背後にいた母さんがクスッと笑った
「父さん楽しみにしてたのよ。和が女の子連れてくるって。」
それを聞いていた姉ちゃんも隠れる様に吹き出していた。
思った通り由梨は家族に馴染んでくれて特に姉ちゃんに気に入られている。
ちょっと癪だけど
昼ごはんが終わると父さんは早々に仕事に戻り、ゲームをしていると姉ちゃんと母さんと由梨が談笑していた。
そろそろ帰ろうかと思い由梨に近づくと姉ちゃんが凄く嫌そうな顔をした
「何よ?和。女子会なんだけど。邪魔よ」
邪魔って失礼だなと苦笑いになる
「いや、そろそろ帰ろうかと。もうちょいいたい?」
そうですね。と立ち上がる由梨に、帰るのー?と引き止めようとする姉ちゃんに、連絡必ずします。と言う由梨
「あのね。由梨ちゃん。言い忘れてたけど。」
ちょっと言いづらそうに言う母さんに皆んなが少し静まる
「そんな大した事じゃないけど、…お母さんだと思ってくれたら嬉しいわ」
そう言ってニコッと笑う母さん。
涙を指で拭い、ありがとうございます。と深々頭を下げた由梨は凄く嬉しそうで、何故か俺も嬉しくて目を細めて由梨を見つめた
家に帰りソファで、ふぅ。と一息つく由梨は力が抜けたようになっていた
はい。と言って淹れたてのコーヒーを渡し自分も隣に座ってコーヒーを飲んだ。
「勝手に、ごめん」
コーヒーをテーブルに置き頭を下げると由梨も同じようにコーヒーを置く
「ほんとはさ、そんなつもりなかったんだけど、色々あって話したんだ。由梨のこと。」
食事の準備中にちょっと聞こえてしまった会話から推測するに母さんと姉ちゃんは知っていることを話したのかなって思ったので勝手に話してしまったことを少し後悔していた。