第4章 2人の距離 4
「あ、ハンバーグです!今日インサート撮り見て食べたくなっちゃって」
インサート撮りとはタレントが食べる物だけを撮ることで。
今日は雪乃さんがハンバーグを食べていたらしい。
「そうねー。スタッフ食べれないしね」
同調すると、そうなんですよねー。とへらぁとして笑う由梨
「それにしてもハンバーグなんて。」
思わずそう言葉にしてみれば、えっ?とちょっと不安そうに返ってきたので、なんでもない。と返した。
ハンバーグの出前なんてあったっけなー。
由梨の口からハンバーグなんて言葉が出てきてから俺の頭の中ではハンバーグで埋め尽くされている。
当然俺が空腹でしかもハンバーグが好きだなんて知らない由梨はなんの罪もないんだけれど。
しばらく歩くとマンションの前に着いた。
由梨のマンションはここからあと5分ほど歩いたところ。
「送って行こうか?」
ぶんぶんと顔を横に振る由梨は想像通りで。
「あ、そう。…じゃあお疲れ様。気をつけて帰んなさいよ」
由梨の頭をポンっとひと撫でしてエントランスに向かおうとすると、あのっ!と呼び止められた。
「あの。……もしかして、夕飯まだですか?」
「へ?あ、あー。まだだけど」
そう言うとちょっと悩んだ顔をした後意を決したように続けた
「良かったら。食べますか?…ハンバーグ」
身長差で自然と上目遣いになってしまう由梨の瞳はエントランスの光に照らされてちょっと潤んで見えた。
少し生唾を飲み込んでみる。
だってさ。
由梨とハンバーグだなんてどちらも大好物で。
そんな誘惑に誘われてるんだよ?
涎が出ないだけマシだって。
そんな事を馬鹿みたいに思ってるのを隠しきれてないけどニヤっと笑って、じゃあお邪魔しようかな。と返事を返した。
「準備してから行くわ」
それは泊まると言う意味で。
それが分かったのか少し照れくさそうに、お待ちしてます。と返された。