第3章 2人の距離3
テーブルにはぽつんとさっきまで由梨が飲んでいた缶チューハイが置いてある
そいや、仕事後の酒。今日飲んでないな。
ゴクッと喉が鳴った気がした。
そして後先考えず飲んでいると由梨が戻ってきて驚いていた
「え…ニノさん車どうするんですか?」
慌てて言う由梨に、誘惑に負けた。と笑いながら言った。
「いやー。なんかほんと家みたいだな。もう泊まっちゃうかな」
半分本心。半分冗談で言うとまた驚いた顔をする由梨
思わずフッと笑ってしまう
「え。ダメですよ。ニノさんの布団ないし。」
由梨の言葉に反してソファにゴロっとして目を閉じた。
「いーよ。ここで。」
そう言って狸寝入りをすると本当に寝たと思ったのか毛布をかけてくれた。
おやすみ〜。と手をひらひらさせると、おやすみなさい。と返し恐らく寝室に入って行った。
あれ?
本当にいいんだ。
思わず笑ってしまう
由梨のかけてくれた毛布は当然由梨のにおいがして。
あぁ。落ち着くな。
ちょっとからかって直ぐに帰るつもりだったのに本当に泊まろうとしている自分にびっくりした。
自分家で寝る方がベッドで寝れるし当然身体は休まるだろう。
それでもここに留まっているのは離れたくないって気持ちと、それ以上に居心地が良かったから。
目を瞑ると自然に睡魔に襲われやっぱり疲れていたみたいだ。
あと少しで夢の中というところでさっきまでいなかった筈の由梨に声をかけられた。
「あの…ニノさん。」
小さく控えめな声に、ん〜?何〜?と返す
そして眼が覚める様な一発をかまされた。
「ベッド。…どうぞ。使ってください。」
はい?
えっと。どういう事でしょう。
誘ってるのかな。この人。
「え。なに。由梨平気なの?」
無理強いはしたくなくてそう言うと、はい。大丈夫ですよ。と平然に答える由梨
ゆっくり立ち上がり由梨に近づくと俺の横を通り過ぎさっきまで俺が寝ていたソファに腰掛けた
「え…。ちょっと待って。そう言うこと?」
あ、そういうことね。
早とちりした自分がちょっと恥ずかしくなったけどだからといって由梨をそっち寝かせる気にもなれなかった。