第1章 2人の距離
「好きな子、虐めてる気分。…ていうかまさにそれ。今」
涙が溜まる由梨の目元を指で拭いながらそんな事を言っていた。
今、さらっと告白してしまった自分に内心驚いている。
なんでこのタイミングで気づいてしまったのだろう。
やっぱり俺。
由梨が好きなんだ。
俺の突然のさらっとした告白にしばらくフリーズし、眉毛を八の字にして答えに迷っている由梨。
そんな由梨はやっぱり意地悪心を擽るには簡単でハハッと笑いを零しながらぎゅーっと更に抱きしめた
「まあ、さ。とりあえず今は抱きしめられときなさいよ。」
一生懸命、正解を探す由梨はとてつもなく可愛がり甲斐がある。
俺の考えなしの言葉なんて、もうなんも考えなくて良いのにさ。
それにしてもやっぱり由梨は抱きしめ甲斐があるな。
そんな事を考えていると突然由梨の腕が俺の背中に回ってきて抱きしめ返された。
「うわっ!…大胆」
こんな事初めてで思わずからかいたくなりそんな事を言うと、今日は無礼講です。とか言うのでふふっと笑った。
「ありがとう。」
小さな声でそんな事を言う由梨。
こちらこそ。と答えた。
そして由梨はゆっくり俺から離れた。
「ニノさん。もう。なしにしましょう」
真剣にそんな事を言うのでだな。と同意した。
言われる事を分かっていた。
言われなくてももう自分から終わらせようと思っていた
今はこうやって癒されてるけど、このまま続いてしまうときっとただ苦しいだけ。
由梨とのこの思い出を汚したくないって思った
「今までありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
由梨が手を差し出すので
「ああ。今までごちそうさまでした。これからもよろしく」
とニヤッと笑いながら握手に応じると少しクスッと笑う由梨。
こうやって。
俺と由梨の不思議な、曖昧な関係は終わった。
奪い去りたい。とかそう言う気持ちになりきれない俺はやっぱり感情がかけてるかな。
それでも由梨の事が好きな事はかわりないし、由梨が彼氏を選んだ今でも簡単にこの気持ちが治る訳ではない。