第1章 2人の距離
1人で先に店に入り待っていると由梨は俺しかいないのを見て少し驚いた顔をしていた
「あれ?今日はあと誰が来るんですか?」
向かいの席に座りながそう聞くので、ん?誰も来ないけど。と言うと、あ、そうですか。と声は普通なのに一瞬戸惑った顔をした
それに少し笑いそうになったのをメニューを見ているフリでごまかしながらその後の予定を聞くと思った通りの返事が返ってきた。
「あっそう。…んじゃさー。また行きません?ドライブ」
立て続けに、何頼むか決まった?と聞き様子を伺う。
料理が来るまで全く別の話をしていたけど別に嫌な表情や戸惑った表情は見せなかった
「んでさ。どうする?今日はまずいの?」
お皿の中の物を突っつきながら軽く様子を伺うと首を横に振る由梨
「いえ。大丈夫です。実は3日前から家族旅行に出かけているので。」
置いてかれちゃったんだ。と少し驚いた。
俺の想像の中では由梨の彼はかなり束縛が激しくて。
仕事とか関係なく無理矢理にでも連れて行きそうな人だと思っていた
「由梨はいかなかったんだ。最近売れっ子だもんな」
ニヤつきながら言うと、ふふっと笑い
「いや全然ですよ。でも忙しそうだから俺だけ行くって言われました」
ふーん。と軽く返し流した
由梨との2人だけの食事は思ったよりも居心地が良くて結構こういうのも良いなとか思ってた
由梨は俺に気を許してくれたのか最近は気を抜いて接してくれている
食事を済ませ、助手席のドアを開けるとそれをスルーして後部座席に乗り込む由梨に、えー?今日もそっちなの?と言うと面白い返事が返ってきた
「ニノさん。…業界人としてそれはいただけません!万が一撮られたら私、もうニノさんと顔あわせられません。申し訳無さすぎて…
」
本当に申し訳なさそうに言う由梨
由梨は俺が出会った中で今までにいないタイプだ。
言うこともそうだけど行動も面白い。
由梨のこのふんわり感が今の俺にとって癒しになっている