第1章 2人の距離
楓ちゃん顔広いからなーと思いながら
「あれ、そっか。んじゃー。紹介いらないね。」
飲み物のメニューを渡しながら言うと克実さんが慌てだした
「いや、俺知らないから紹介してよ」
その言葉に由梨が答えようとしたので遮った
「いや、いーよいーよ。あなた紹介されなくて。知ったら減っちゃうから。」
しのぶちゃんも悪ノリして、そーね。そーね。とニヤける
なんでよ。減んないだろー。俺一応かなり先輩なんだけど。と言う克実さんに手をひらひらさせて「とりあえず一息つかせてやんなさいよ。飲み物決まった?」と由梨に聞くと笑いながら、はい。と答えた
克実弄りもそこそこにしてあげて飲み始めると思った通り由梨は結構楽しそうでやっぱり誘って良かったと思った。
帰り際の由梨がいないところでしのぶちゃんがニヤニヤして、そう言うことか。と言い出した
なによ。と言うと
「送って行く為に飲まなかったんじゃないの?」
そんな事を言うので、違いますよ。と言った
実際本当にそんな事考えていなかった。
「あー。そうなの?」
あれ?違うの?みたいな顔をするしのぶちゃんに、今日車なんだよねー。と言うと納得していた。
でもそっか。と思い丁寧に挨拶して帰って行く由梨を追いかけた
タクシーを拾う手前で由梨を捕まえ送る事を伝えると素直にお礼を言われた。
車を開けて、隣どーぞ。と言うとそれを断り後部座に座った。
「気にしなくていーのに。」笑いながら言うと、ニノさん。職業柄気をつけて下さいよ。と言うので思わずハハッと笑った
住所を聞いてナビにセットして暫く運転しながらふと思った。
「今日、…待ってるの?彼」
ミラー越しに由梨を見ながらそう言うと少し表情が暗くなった
「…ごめん。でも、大丈夫かなとおもって」
「思わず送るとか言ったけどさ。ほら、…凄いんでしょ?嗅覚」
何が面白かったのかわからなかったけどクスッと突然笑う由梨
「大丈夫です。…今日は違う人のところにいるから。」
いや、待って。
今何て?
「…え?」
一瞬フリーズして目を逸らした。
頭をポリポリ掻きながら誤魔化す。