第1章 2人の距離
キョロキョロしている由梨が可笑しくて、ちょっと可愛くてフフッと笑い掴んでいた手を更に引っ張った。
バランスを崩した由梨を抱きとめると慌てて離れようとするので離したくなくてぎゅーっと抱きしめた。
力が少し抜けたと思ったらまた離れようとするので意地悪心でフフッと笑いながら離さないと
「あ、あの!ニノさん!私、彼氏が、「知ってるよ」」
慌てて言うので被せて言った。
この慌てっぷりがなんとも言えない。
由梨はとてつもなく弄り甲斐があると思う。
「私の彼氏。…鼻が聞くんです。犬並みに」
へ?
思わず少し距離を開けるとササっと離れる由梨。
でもまた拳を握りしめて欲しくないから手だけはしっかりと握っていた
「どういうこと?」
まったく意味がわからなくてそう聞くと説明し出した
「あの…。私、チェックがあるんです。においの。」
チェックって。
ほんと。何されてんだよ。
「それはさ、つまり、浮気の?」
俺が聞くと、まあ、そんな感じです。と言う由梨
匂いだけで浮気疑われるなんて。
「由梨さ、携帯貸してよ。」
どうしてもこのまま由梨となにもなかった様にはしたくなかったので思い切ってそんなことを言うとロックを解除して快く貸してくれた
ちょっと嬉しくて鼻歌を歌いながら操作していく。
連絡先の登録をし渡すと不思議そうに俺を見る
それを見て少しフフッと笑った
「俺の名前入ってたら。怒るでしょ?」
名前は一ノ宮和美にした。
一ノ宮はたまに飯行く時に名乗る偽名で和美はなんとなくだったけど。
「えっ。…ていうことはこれ。ニノさんの?…そんな!いただけません!」
慌てて消そうとするからそっと携帯を操作する手を握った。
「いーから、さ。…もらっといてよ」
ね?といってニコッと笑い立ち上がり握っていた手を引き由梨も立たせた。
「俺もう一本吸ってくからさ。お先にどーぞ」
ニコッと笑顔で言うと、失礼します。と一礼して先に会場に戻って行った
二本目の煙草に火をつけて煙を吸い込む。
吐き出す時に思わず溜息も一緒に出た
俺は多分。
由梨に惹かれていると思う。
抱きしめてあんなに穏やかな気持ちになるのは初めてだ。