第1章 尊厳死という選択
「そんなの幸せじゃないっ!俺にとっての幸せは家族が揃ってることだ!だから姉ちゃん!」
「誠人、大学に行ってお父さん達に私の分まで親孝行してくれるかな?」
「姉ちゃん、話聞けって!」
「父さんにネクタイ買って、母さんを箱根に連れてってほしいな。自分にもご褒美買いなよ?」
「姉ちゃん…姉ちゃん…」
「誠人、私最近誠人の笑顔見てないよ。みんなの笑顔を見てから逝きたいなぁ」
「うっ…うぅっ……」
私はみんなを泣かせたかったわけじゃないのになぁ。結局、傷つけてちゃってる。
その後、家族4人で納得いくまで話し合い、満足するまで泣き続けた。
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医者にも話を通し、私の寿命は残り1週間となった。
毎日毎日、知り合いの人が花などを持ち寄ってお別れの言葉を告げてくる。
みんなが泣くから私まで泣いてしまった。
そんなこと言われたら、されたら生きたくなってしまう。
そんなこんなで残り1日となった。
今日からは家族以外は出入り禁止となる。
「サラ、何か食べたいものはないかい?」
「そーだな、お母さんの卵焼きかな」
「そんなものでいいの?」と言いながらもメモしてくれていた。
父さんもここ1週間は仕事を休んでくれている。
「サラ、お前が小学生の時に書いた作文。久しぶりに読んだが字が汚いなぁ。…いいことは書いてたがな」
貶してから褒めるスタイル変わらないようだ。
「私なんて書いてた?…あー、やっぱいいや。なんとなく覚えてる」
確か看護師になりたい、って書いたかな。
それを父親に言わせるなんてダメだろう。
未来のない私に未来のことを話すのはちょっとキツイかな…。
「誠人、なんかゲームしようよ。トランプとかさ」
「いいよ、ババ抜きみんなでするか」
そんな中で始まったババ抜きで、やっとみんなの笑顔が見れた。
これでもうやり残したことはない。
明日の今、私はこの世にいない。それって現実味がなくてとても怖い。