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尊厳死というものは…【短編】

第1章 尊厳死という選択


「無理しないで、私ん家そんな裕福じゃなかったはずでしょ?

父さんのその靴下、何回も縫ってるしょ?その革靴だって親指曲げながら履いてるね。

母さんの一張羅、私のために売ったでしょ?
母さんの好きな旅行も5年前から行ってないしね。

誠人のYシャツ、脇のところピチピチ。それにそのリュックもボロボロ。

なのに私のパジャマも身の回りのものも新品で綺麗。そして食生活も完璧なんだよ?

頑張ってるのは母さん達、なのに楽きてる私が一番贅沢してるっ!」


「お前は頑張って生きてるだろっ!」


そう言って父さんと母さんは泣き始めてしまった。


「私は呼吸さえ自分だけではできない。トイレもお風呂も…。もう辛いの。もう死なせてよ」


ーパチンッ


父さんが私の頬を思いっきり叩いた。


「この親不孝者がっ!甘ったれんなっ!」

「父さん…ごめんなさい」



「サラ、お願いだから生きるって言って」

「母さん…ごめんなさい」


私の決心が変わらないのを悟ったのか2人は私に抱きついてきて思いっきり泣いた。

この2人を泣かすなんてしたくなかった。

それに誠人は優しいから昨日の発言を気にして、真っ青な顔して口を閉じている。


「母さん、父さん。少し誠人と2人っきりにして」


すると2人は病室を出て行ってくれた。


「昨日、怒られちゃったんだって?ごめんね、サラのせいでっ…誠人は悪くないのにね」


誠人は口を閉じたまま、私を見る。


「ねぇ、誠人…?なんか言って?」


震えて力の入らない手で彼の頬に手を伸ばすと、誠人は手を取ってくれた。


「姉ちゃん…マジで言ってんの?本当に死ぬの?」


私はその問いにしっかり頷く。


「俺があんなこと言ったから…?あれ、本気じゃないよ。あ、謝るからっ!だからっ!」



そう言って誠人までぽろぽろと涙をこぼし始めてその場にしゃがんでしまった。


「誠人のせいじゃないよ?私ね、幸せになりたいの」

「なら生きろよっ!幸せになれよっ!」


私は手を移動させて誠人の頭を撫でる。


「私の幸せは父さんと母さんと誠人が幸せになること。みんなに清潔な格好して、たくさん旅行してほしい」



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