第1章 尊厳死という選択
私はまた今日も目を覚ました。
あぁ、私死ねなかったんだ…。
「か、母さん…」と私が声を出すとうたた寝をしていた母さんは顔を上げた。
「ーサラッ!良かったっ!いきなり発作起こして…誠人も出てたみたいですぐに気づけなくてごめんなさいね。誠人にもちゃんと言っておいたから」
そう言われてまた心が苦しくなった。
「違うの、母さん。私が誠人に飲み物買ってきてほしいって頼んだだけなの。だから怒らないであげて」
私はまた誠人を、母さんを苦しめてしまったようだ。
私にできることは何もない…。ただ楠木家の財産を消費しているだけだ。
あっ、1つできることがあった。【尊厳死】を選べばいいのだ。
患者の意思で延命治療を終わらすことができるという法律。まさか自分が使うとは…。
残りの寿命である4年分の医療費できっと誠人は大学に行けるだろう。
それに母さんも好きだった仕事に戻れるし、父さんも仕事を減らせる。
最初からこうしてれば良かったんだ。
「母さん、私は尊厳死を選ぶよ」
「…え?今なんて?」
私は母さんに微笑みながらそう言った。
もう私は生きていたくない、家族を傷つけてまで生きる価値など私にはない。
「嫌よ、母さんは認めないっ!」
「無理だよ。尊厳死は患者の意思だけで決められるもの」
私がそう言うと母さんは泣きながら病室を出て行った。
ごめんね、でもそれしか私には選択できない。
それから3日後、私の家族全員が病室にやってきた。
「サラ、聞いたぞ。…ちゃんと理由を聞かせろ」
威厳たっぷりの父さんが椅子に座って言った。
「もう辛いの。身体は痛いし、何もできないし生きる楽しみもないしさ。…今まで生化してくれてありがとう。おかげで美味しいものも食べれたからもう満足なの」
「お前の本心か?…どうせ金のこと気にしてんだろ?」
さすが父さん、なんでそう言うこというかな。