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ただ一つの心を君に捧げる

第2章 黒を持つ奴隷


「えっ、服を脱ぐのか?」

俺の頭に男に犯される奴隷の男の姿が浮かんだ。この世の中には女ではなく男に興味を持つ者もいるらしい。奴隷である限り自分ももしかしたら同じ事をされるかもしれないと想像した事はあるけれど、まさか俺はこの男の相手をすることになるのだろうか。

俺の戸惑いに気づいたのか、褐色の男は態とらしくもう一度大きな吐息をついた。

「別に貴方を犯すつもりは有りません。…面倒ですね、早く脱ぎなさい」

冷たい声色に急かされるように俺は慌てて着ている服を脱いだ。

「何をしているんです、全部脱ぎなさい」

頭の悪い人ですね、と言われて俺は唇を噛んだ。そして思いきって下着に手をかけると、一気にずり下ろした。

男はそれを何の感情も持たない瞳で見つめた後、持って来ていた鞄をテーブルへと置き、留め金を外して蓋を開けた。するとフワリと薬品の臭いがした。奴隷商人の元に居たときに時々医者が来たのだが、その医者と同じ臭いがした。

男は鞄の中から小さな小瓶を取り出し、ラベルを確認した。そして数度それを繰り返し目当てのものを見付けたのか、それを脇へと置いてはめていた手袋へと手をかけた。
男は白い手袋を外して薬品の側へ置くと、代わりに中から取り出したゴムの手袋をつけた。そして俺の方を向き、平然とした表情で口を開いた。

「ぇ?」

一瞬、驚きすぎて言葉が理解できなかった。

「頭が悪い上に耳も悪いのですか?その粗悪なものを勃起させなさいと言ったんですよ」

男が指差したのは力なく垂れ下がった俺の股間だった。やっぱりこいつは俺をどうこうしようと言うのだろうか。体を強張らせて動かなくなった俺に男が焦れたように舌打ちした。

「病気を持った者に主の相手をさせる訳にはいかないでしょう。貴方の体の検査をするだけです」

理解しましたか、と見下されて俺は男から視線を外した。男は俺の側に来ると、肩に手を置いて空いた手を俺の股間へと伸ばした。

「っ…」

俺の大事な所に触られて思わず抵抗しようとして我慢した。女神様にお仕えするのにこれは必要な行為なんだとそう自分に言い聞かせた。男は俺の股間をすくい上げて何度か揺らし、重みを確認しているようだ。

「特別大きくも無いですが、小さい訳でも無いですね。形は…まぁ、良いでしょう。出来物や爛れなども無いようですね」

そう言って男は俺の股間を扱き始めた。
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