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ただ一つの心を君に捧げる

第2章 黒を持つ奴隷


○奴隷○

俺は女神様に買われて大きな屋敷に連れて来られた。

女神様を見た時、もしかしたら俺は死んでしまって女神様が俺を迎えに来てくれたんじゃないかと思ったのだけれど、どうやら違うらしい。

俺は褐色の肌の男に浴室に放り込まれた。そこには女の人が三人いて、泡に茶色い色がつかなくなるまで何度も髪を洗われ、体も皮が剥けるのでは無いかと思うくらいに擦られた。

女の人達に「俺に触っても平気なのか」と聞いたのだけれど一生懸命に俺を洗う女の人達には聞こえなかったのだろうか、返事が返ってこなかった。まぁ、俺が困る事では無いからとその後は黙っておくことにした。

親方につけられた傷は痛かったけれど、こんなにさっぱりしたのは初めてだった。

風呂から出た俺は、しっかりと拭きあげられ怪我を治療された。高価な薬を惜しみ無く使われて、つい緊張に体を固くしてしまった。

そして綺麗な綿の服を着せられて次に連れていかれた先は、食堂だった。そこには見たこともない、キラキラと光る美味しそうな食事の数々が並んでいた。
滅多に食うことの出来ない肉が沢山皿の上に乗っていて、見たことの無い食材が調理されてとても良い香りがしていた。

それを見た俺は大量の唾液が溢れ出て、口からもれそうになるそれを手の甲で拭った。

俺をここまで案内してくれた女の人が、俺を椅子に座らせた後、俺の前に切り分けた肉や取り分けた野菜を置いた。

「これ、俺が食って良いのか?」

問いかけてもやっぱり女の人は答えなかった。でも食べてはいけないとも言われなかったから、俺は我慢が出来ず食べることにした。

最初は恐る恐る、女の人が取り分けてくれたものをちびちびと慣れないフォークで口に運んでいたのだけれど、口の中に広がる肉汁やソースの味に興奮して、気付けば手掴みで自分の思うままに食事を口に運んでいた。

最初は俺の前へ肉を切り分けたり野菜を取り分けたりしていた女の人も、今はもう諦めたのか俺のやりたいようにさせて後ろで俺の食事を見ていた。

あぁ、こんなに美味いもの食ったこと無い!体もさっぱりしていて、髪からも良い匂いがする。服だって嫌な臭いがしない清潔なものだ。

何て幸せなんだろう。
俺は口に肉を押し込みながら堪えきれずに泣いた。俺にとってここは天国だった。


俺はこんな素敵な所に連れてきてくれた女神様に、涙を流しながら感謝した。
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