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ただ一つの心を君に捧げる

第3章 女主人


○ノアール○

俺は庭での事を思い出して、部屋で呆然としていた。頭が熱病にかかってしまった様に霞みがかってはっきりとしない。ただ、ずっとあの光景が頭の中で繰り返される。美しいご主人様の手が俺のものに触れて、あの色付いた艶やかな唇に俺のものが…

「うわぁぁ!」

俺は頭を抱えて体を丸めた。違和感を覚えて下を見ると、俺のそこは反応してズボンを押し上げていた。

「…嘘だろ?」

俺は自分の我慢の無さに泣きたくなった。庭でご主人様に触れて貰って、欲望を吐き出したはずの俺の高ぶりはご主人様の形の良い唇から、俺の精液がトロリと吐き出される様子を見てまた高ぶってしまったのだ。

その反応を目にしたご主人様は、悪戯に笑って俺の高ぶりを指先で突いた。また触れて貰えると期待した俺にご主人様は手を引きながらこう言ったのだ。

―――――続きは夜までお預け。それまで自分でここに触れては駄目よ?

そう言われて、俺は高ぶったままに呆然と部屋に戻って来た。触りたい、触って熱を外に吐き出したい。でもご主人様の言うことを破るわけにはいかなかった。

その熱がやっと落ち着いたところだったのに、また勃起してしまうなんて何て事だろう。

それにしても…本当に気持ちが良かった。

ご主人様の口の中は温かく湿っていて、舌が一つの生き物のように俺のものに絡み付いて、ヌルヌルと擦り刺激した。それは自分で触れるのとは比べ物にならない程に心地よくて、癖になりそうだった。

口の中であんなに気持ち良かったのだから、ご主人様の中は一体どれだけ心地よいのだろう。ご主人様の中に俺のものを突き刺して、好きなだけ腰を振ることが出来たらどれだけ気持ちいいんだろう。

何て事を考えると、勿論俺の高ぶりは大人しくなんてなってくれなくて。

「あぁー、駄目だ駄目だ!考えるな俺っ!」

何とか考えずにいようとしても、あんなに刺激的で気持ちの良い事はなかなか頭から離れない。でもご主人様の命令だから触ってこの体内に渦巻く熱を取り除くことは出来ない。

「あぁ、苦しいです、ご主人様…」

ご主人様と呼ぶだけでジンと下腹部に震えが走る。

「ご主人様、ご主人様…」

俺は膝を擦り合わせた。そして荒い呼吸をつきながら目を閉じる。


早く夜になってくれ。


俺は絶え間無く続く欲望の波に、ご主人様を呼びながら早く夜が来る事を祈ったのだった。
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