第3章 女主人
丁寧に丁寧に、口付けとはどう言うものかノアールに教えるようにゆっくりと舌を動かして見せる。舌を擦り合わせ、唾液を絡める。舌先でノアールの舌の裏を擽ると、ノアールの体が小さく揺れた。
ここは私も気持ちの良い所だから、きっとノアールも何かを感じたのだろう。私はそこを何度も舌先で舐めて、ここが気持ちいい場所なのだと教え込む。
「ん…」
「はっ、ふ…」
顔の角度を変えて唇を重ね直した時だった。ノアールの手が私の肩を掴んで舌を私の口内へと捩じ込んできた。
「んんっ」
ノアールの舌は、多少乱暴ながらも私の動きを真似るように口内を動き回った。そして私が教えたように、ちゃんと気持ちの良い場所を舌でなぞってくる。
ノアールは素直で物覚えも良さそうだ。
「んっ、はぁ、ノア…」
「っ、はぁ、はぁ…キス、すげー気持ちいい…んっ」
「っ!」
口付けの気持ち良さを知ったのか、ノアールがもっとと私の唇を塞いだ。そして自ら私の口内を探るように舌を動かして、私の感じる場所を探し始める。
「んっ、はッ、ノアッ」
「っ、ん、んん」
ノアールが夢中で何度も何度も口付けてくる。流石に私は息苦しくなって、逃げるようにノアールから顔を背けた。急いで深く息を吸い込み呼吸を整える。
「はぁ、はぁ…ぁ、ぁ、俺…す、すいません、俺、気持ち良くて、夢中になって…」
私が荒く息をつく姿を見てノアールが慌てた。我を忘れて乱暴に口付けてしまった事に気が付いたのだろう。それでもノアールが口付けを気に入ったのなら良かったと思う。気に入ったのなら何度でも出来るもの。私も口付けが好きだから。
「ん…大丈夫よ、ノアが気持ちいいなら良かったわ。でも、今度はもっとゆっくり…ね?」
頭を撫でると、ノアールは恥ずかしそうに笑って小さく頷いた。そして恐る恐る唇を近付け重ねると、今度はゆっくりと私の呼吸に合わせて口付けを始めた。
彼は頭が良い。私の言ったことを理解して、私が息苦しくなればちゃんと唇を離して休憩を入れてくれる。私は良い子とばかりに頭を撫でた。
そしてその手を首へと這わせ、肩を通り、胸元、お腹、下腹部…そしてノアールの股間へと触れた。
ノアールのそれはまだ硬さを持っておらず、私はノアールの興奮を促すように優しく何度もそこを撫でた。
けれど、ノアールのそこは私がいくら触れても反応を示すことは無かった。