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ただ一つの心を君に捧げる

第3章 女主人


「さて、ノア。貴方のお仕事の事は知っているかしら?」

私の問いかけにノアールの体が明らかに強張った。そして小さく震えながら頷いて見せる。

「はい、分かって…ます。奴隷の時に、どんな事をするのかも、見て、知ってます」

「そう…ならベッドに行きましょうか」

私はソファから立ち上がってノアールの手を引いた。ノアールは私の言葉に抵抗することなく、大人しく従ってベッドに移動した。
ノアールをベッドの縁に座らせて私もその横に座る。

「緊張してる?」

「いや、い、いえ…はい、少し、だけ」

言っていることが支離滅裂だ。イイエなのかハイなのか良く分からない。私は小さく笑いながらノアールの頬へ唇を押し当てた。

「っ!」

目に見えてノアールの体が跳ねた。

「ノア、大丈夫よ。落ち着いて」

「は、い…」

顔が赤く染まり、体が小さく震えている。私はそんな彼の頬、耳、首もとへと順番にキスをした。唇が触れる度にノアールの体がビクビクと反応する。
その初な反応が何だかとても興奮した。生娘が好きな男の心理はこんな感じなのかしらと想像して、笑いが込み上げた。

ノアールの顔に自分の顔を近付けて、唇が触れそうな距離で問いかける。

「ノア、キスをしたことは有るかしら?」

ノアールの瞳が私の唇をじっと見詰めている。そして私がキスと言うと、想像したのかゴクリと喉を鳴らした。

「キスは…したこと無い、です」

「なら、教えてあげないとね?」

私はそう告げて自分の唇をノアールの唇へ押し当てた。ノアールの唇は切れていたところが瘡蓋になっているのか、少し硬い部分が有った。

「っ、はぁ、すげっ、柔らか…」

思わずと言った様子で口にしたノアールに笑った。

「ほらノア、目を閉じて口を開けなさい。キスはこれだけじゃ無いのよ?」

「はい…」

ノアールは私の言う通りに震える唇を僅かに開いた。そこから見える舌が艶かしい。
私はベッドに手をついて身を乗り出すと、顔を傾けてノアールの唇に自分の唇を重ねた。そしてノアールを怖がらせない様に、ゆっくりと舌を差し入れて薄く目を開く。
ノアールの顔は、期待と興奮に赤く染まったままだった。どうやら口付けは嫌では無いみたい。

私はそう判断すると、再び目を閉じて舌先で彼の口内をゆっくりと辿った。歯列をなぞると、恐る恐る伸ばされた彼の舌に自分の舌を擦り付けた。
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