第4章 【山崎宗介】Emerald green
どこに行けば会えるのかもよくわからないまま会場の中を歩き回るより、出入口の近くで待ち伏せた方がいい。
慣れないことをして疲れていたのもあって、出入口付近のベンチに座って、人の流れの中に宗介の姿を探していた。
鮫柄のジャージは何度か見たが、宗介はもちろん、凛の姿も見ていない。
最悪江を頼ることも考えて、メールを送ってはみたものの返信は来ていなかった。
暗くなっていく携帯の画面を見つめながら、深く息を吐く。
電車の本数もそこまで多くないし、あと十分だけ待ってみよう。
会えなかったら会えなかったで、そこまでだったんだと思えば気が楽だ。
一面硝子張りの壁から外を眺めると、日が沈みかけていた。
朱い夕日の次の日は雨になるって、誰に聞いたんだったか。
そんなくだらないことを考えていた。
「……?」
誰かに名前を呼ばれた気がして、そう言えばぼうっとしている暇はなかったんだと思い直す。
それと同時に自分を呼ぶ声に懐かしさを覚えて、慌ててそちらに顔を向けた。
「宗介……」
人の流れなんて気にせずに通路に立ち止まって、私の方に視線を向けていたのはやっぱり宗介だった。
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