第4章 【山崎宗介】Emerald green
宗介があの時どんな顔で私の言葉を聞いていたのか、私は知らない。
けれど、このやり取りが私達の関係に亀裂を入れたことだけは間違いなかった。
私達が廊下で話すことはなくなり、宗介が私を試合に呼んでくれることもなくなった。
もともと水嫌いの私が、宗介と凛に嫌々連れていかれていた試合に、呼ばれなくなったのはこの頃からだった。
寂しくなかったと言うと嘘になるけれど、私から試合を観に行きたいとは言えなかった。
言ってはいけないような、そんな気がしていた。
けれど、今でも気が付くとあの景色を思い返している時がある。
夏になると決まって耳にしていた、あの独特の声援も、飛び込みの時の水の跳ねる音も、もうずっと聞いていないのに。
一番にゴールした宗介が、応援席に居る私の方に向けて拳を掲げているところまで、全てが鮮明に思い出せるのは、やっぱり好きだからだと思う。
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