• テキストサイズ

誰得?俺得!!短編集

第4章  【山崎宗介】Emerald green







中学を卒業してから、宗介とは連絡を取っていない。

もっと言えばそれよりも前、中学一年の夏から私達はほとんど話さなくなった。





小学校までのように、世界は狭くもなければ広くもない。

クラスが違えば話す機会も格段に減り、私達が話をするとなるといつも廊下の隅だった。

移動教室の時。

お互い友達に先に行ってもらって、少しだけ喋って次の授業へ向かう。

ときどき昼休みに、トイレの帰りにばったり会ったりもした。

新しいクラスのこと、部活のこと、凛から送られてくる手紙のこと。

話したいことはたくさんあって、ついつい話し込んでしまうことも多かった。



「お前ら付き合ってんのー?」

だから、そんな揶揄うような聞かれ方をしたのだろう。

げらげら笑いながら、私と宗介が話している傍にやって来たのは、確か私のクラスの男子だった。

私も宗介も一瞬なんのことを言われているのか分からなくて、少しして、それが自分達のこの関係のことを指しているのだと気付いた時。

私達はどちらからともなく、互いの目を見つめていた。

動揺と、苛立ちと、焦燥と、期待。

彼のエメラルドグリーンの瞳には、そんな複雑な色が滲んでいるように思えた。

けれどそれはきっと、半分くらい私の願望に過ぎなかったんだと思う。



「っ、俺らはそんなんじゃねぇよ」

最近急に低くなった宗介の声が、私達の関係をはっきりと否定する。

だってそれが、間違えようのない事実だから。

「……そうだよ」

意気地無しの私が、幼馴染って関係に甘えて何も行動を起こさなかった結果だから。

「ただ単に、幼馴染ってだけだから」

私がなるべく平坦な声で言うと、男子達はどこか面白くなさそうな顔をしていたけれど、それ以上揶揄っては来なかった。



/ 55ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp