第4章 【山崎宗介】Emerald green
中学を卒業してから、宗介とは連絡を取っていない。
もっと言えばそれよりも前、中学一年の夏から私達はほとんど話さなくなった。
小学校までのように、世界は狭くもなければ広くもない。
クラスが違えば話す機会も格段に減り、私達が話をするとなるといつも廊下の隅だった。
移動教室の時。
お互い友達に先に行ってもらって、少しだけ喋って次の授業へ向かう。
ときどき昼休みに、トイレの帰りにばったり会ったりもした。
新しいクラスのこと、部活のこと、凛から送られてくる手紙のこと。
話したいことはたくさんあって、ついつい話し込んでしまうことも多かった。
「お前ら付き合ってんのー?」
だから、そんな揶揄うような聞かれ方をしたのだろう。
げらげら笑いながら、私と宗介が話している傍にやって来たのは、確か私のクラスの男子だった。
私も宗介も一瞬なんのことを言われているのか分からなくて、少しして、それが自分達のこの関係のことを指しているのだと気付いた時。
私達はどちらからともなく、互いの目を見つめていた。
動揺と、苛立ちと、焦燥と、期待。
彼のエメラルドグリーンの瞳には、そんな複雑な色が滲んでいるように思えた。
けれどそれはきっと、半分くらい私の願望に過ぎなかったんだと思う。
「っ、俺らはそんなんじゃねぇよ」
最近急に低くなった宗介の声が、私達の関係をはっきりと否定する。
だってそれが、間違えようのない事実だから。
「……そうだよ」
意気地無しの私が、幼馴染って関係に甘えて何も行動を起こさなかった結果だから。
「ただ単に、幼馴染ってだけだから」
私がなるべく平坦な声で言うと、男子達はどこか面白くなさそうな顔をしていたけれど、それ以上揶揄っては来なかった。
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