第4章 【山崎宗介】Emerald green
二人が同じチームで泳いだのは、五年生の時のあれが最初で最後だった。
それからの宗介は、凛の隣で好敵手として泳げるようにって、強くなることだけを目指して我武者羅に泳いでいた。
凛がオーストラリアに行った後は尚更だった。
そんな彼が凛と一緒にリレーを泳ぐと決めたことに、違和感しか覚えない。
中学卒業と同時に東京に出て、水泳強豪校に進学した宗介が、今さら凛の仲間になることを選ぶだなんて思ってもみなかった。
私の知っている彼ならきっと、凛と戦うのは全国だと信じてそれを目標に泳いでいるはずだ。
「どうして……」
そう思ったけれど、“私の知っている彼”は所詮三年前までの彼でしかない。
「ちゃん…?」
江の声で、一瞬だけ意識が現実に引き戻される。
「ううん……私も、今知ったよ」
曖昧に笑ってそう応えてからは、江がなんて言ってくれたかだとか、自分がなんて返したかだとか、全然覚えてもいなかった。
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