第4章 【山崎宗介】Emerald green
小学生最後の冬。
凛が転校する時に言っていた“一緒に泳ぎたいやつ”が、まさか七瀬くんだったとは思わなかったけど。
澄んだ水みたいな目をした彼が、どんな泳ぎで凛を魅了したのか少し気になるような気もした。
「あのね……、ちゃんはもう聞いてるかもしれないけど」
ぼうっといろいろなことを思い出している時に、江が突然口を開いた。
「宗介くん、こっちに帰って来てるって」
躊躇いがちに吐き出されたその一言は、すんなり私の中に落ちて来て、そして酷く私を揺さぶった。
「リレーにも出るんだって、お兄ちゃんが言ってたの」
凛が大好きで、その隣で泳ぐことが楽しくて仕方ないって顔をしていたあの頃でも、あんなに頑なに“リレーは好きじゃない”、“俺には向いてない”って言ってたのに。
それこそ、そのことで凛と喧嘩になるくらいには。
本格的に泳ぐことを辞めていた私には、仲間とリレーを泳ぐことの楽しさも、自分の力だけで勝ち進んで行く喜びも、どちらもわかるようでわからなかった。
だからあの時も、何も言わずにただ二人が仲直りするのを待っていた。
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