第2章 無垢な少女
---あれからもうすぐ16年。
風の部族、風牙の都の元五部族将軍ムンドクの家の庭で少女が空を見ていた。
『早く来週にならないかな』
「何が?」
『来週になれば、私は16歳。待ち遠しいんだもん』
くるっと振り向いてニコニコと答えれば、家の縁側に座る少年が「ふーん」と興味なさそうに言う。
『テウ興味なさそう。今日門番の方は?ヘンデもいないね?』
「俺もヘンデも休みだよ。用事があるって家にいる。お前こそ診療所の手伝いはいいのかよ」
『私もお休みだよ。だから、ひなたぼっこ』
「ふーん」
とことことテウの隣に座り、所々怪我をしているのに気が付く。
『テウ!怪我してる!』
「…あ~、さっきまでヘンデと訓練してたから」
『待ってて。薬箱持ってくる』
「別にい………相変わらずはえーな」
別にいい、と言おうとしたら、幼馴染の少女は治療すると言い奥へと消える。
呆れつつ少し待っていると、少女は戻るなりテウの手当てを手早く始めた。
『毎日毎日怪我しすぎ』
「怪我なんか気にして訓練なんてできるわけないだろ」
『そうだけど…。あ、でね、来週の私の誕生日、ハク様帰って来ないかなと思ってムンドク様に聞いたら、やっぱり無理だろうって』
「おま…そんなの無理だってわかってるだろ?ヨナ姫の誕生日なんだから」
『………だよね』
しゅん…とする幼馴染に、「う……」と気まずそうに目をそらす。