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虹に向かって

第4章 貫く者と逃げる者


直三は先程まで、風呂場なような狭い場所に
こそこそと隠れていたため


やっと身体を伸ばせると上機嫌になりながら、家に帰った。




それなのに…

「なんでお前がここにいるんや‼」

直三の母親が、近所にもきこえる位おおきい声で
叫んだ。



戸を開けたところで、直三の母親は
ワラでなにかを編んでいたが


母親は変な姿勢のまま、手はとまっている。





直三の家は農家であったが、
直三は農業に身がはいらず女のお尻ばかりおいかけていた。 


にもかかわらず、プライドが高く
母親は手を焼いていた、




下の妹二人はすぐに嫁にもらわれていき、
長男の直三は母親と二人で暮らしていた。



直三は気が向けば 畑仕事をてつだうものの、
それはそれは気紛れな仕事ぶりだった。
   

全うにはたらかない、直三に
お嫁さんがきてくれることもなく


片親で育てた弱みから、過分にやっている
小遣いを遣い直三は街に遊びにいき、
金を無駄に遣っては また母親から小遣いを貰うしまつだった。



そんな直三に母親がしびれを
きらし


千長の家来として、半ば無理矢理
直三を城に志願兵として奉公にだした。


千長は貧しい農民や町民から家来を
募集していた。



また千長は、志願者でも
身体つきや健康状態をみて兵に向いていないものを
見分け、断るようにしていた。



直三は農家出の割には
腕が細く、身体もヒョロヒョロであったが

千長は 直三の母親の勢いに負けて
直三を城へつかわすことにした。





直三の母親は、今日が
千長軍の大戦がある日だとわかって
いたため
 


直三のスッキリとした姿や

傷ひとつなければ、 何の泥もついていない
身体をみて
  

再びすっとんきょうな位の大きな声をだした。

「あんた、今日の戦いかなかったんだね‼」


母親は直三のことをよく理解していた。



こんな子でも我が子、
仕方ない。



畑仕事もつとまらなければ、武士としても
お役目を果たせない。



千長軍敗戦の噂も回ってきていたため
直三はもう死んでいるかもしれないと思っていた。


その為ら
生きている直三をみて


安心したものの、これからな直三の扱いについて
困惑した。



不安と嬉しさ、矛盾した

複雑な感情を直三の母親は感じていた。
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