第3章 儚い記憶
千長は 何か天に引っ張られているように
ぐっと
せすじを伸ばし、言葉を続けた。
「命に変えても敵を討ち果たします。」
一瞬驚いた表情を見せた上皇であったが、
すぐに機嫌を取り直し満足げにいった。
「善きにはからえ。」
千長の鼻の頭にはらはらと何かが落ちてきた。
手のひらにのせてみると、
それは桜の花びらだった。
上皇の屋敷の庭には何本も桜がうえられている。
苦しくも、
上皇の時代が終わろうとしているのを
桜は知っているように
千長は思えた、
天に、千長は鮮やかに散っていく
ことを
もとめられているとさとった。