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虹に向かって

第3章 儚い記憶



赤ちゃんだった私は、また眠りについていた。



真っ暗な世界。



眠れば眠る前の記憶はなくなるのに




夢の中だけ
 不思議と自分の記憶を見ることができた。




私に夢でみる記憶を選ぶことは
できなかった。





勝手に流れる映像を強制的にみることになる。





ただ、赤ちゃんの時に見るその夢の中には



にこやかな女性はいなかった。
そして、夢の中で私はいつも逃げていた。

…。…。


…。










「バタバタバタバタ」

暗闇の中から、複数の人間が木の床板を走る
音がする。


私の目は走る足にフォーカスし、




しだいに、私の視線は全体をとらえた。




走っている人間は皆、着物を着ている。
そして頭はまげの様な物ををゆっている。




走っているのは、城の廊下のようだった。





色々な声が聞こえる。







「…わしら、やっと大将に恩を返す時が来た」

太った武士の様な男が笑顔ではなす。どこか、ひきつった
顔をしている。





ひみょうな表情を見逃さなかった老兵が
返す。

「いやいや、上皇の命令じゃが ウチの大将がそのまま従ったらわしらに死ににいけとゆうとるようなもんじゃ。」





真っ直ぐな目をした若者が、かするような声で
はなしだした。




「わしら、農民を兵士として城に呼び
 家族に領地として畑をくださったのは大将じゃ。」



その若者は顔がすすでよごれている。


城にずっと在中する武士もいれば

彼のように
普段は農業に従事し、およびがかかれば
武士として奉公する者もいる。




とつぜん、我こそはと
 一人のりりしい眉をした、いかにも
武士という男がいきりたって話に入ってきた。



「そうじゃ。わしらはその大将のために、
 喜んで死にに行くんじゃ‼」







…負ける戦とかは分かっていた。




時は昔。

まだ戦国の世ではない、この世界では君主
命令を守るのは絶対であった。
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