第2章 愛
次に目が覚めた時は、頬が
冷たかった
冷たい…
頬が濡れていて、気持ち悪い…
でも、私は頬をふくことで
頬の不快感から解放されることを知らない。
ただ、何故こんなに頬がベタベタしているのか
ずっと考えていた。
私は今高い位置から地面を見ている。
誰かに抱っこされてた。
重いであろう私を
たちながら
抱っこしているその女性は
とろけそうな
笑顔で私のことを見ている。
誰だろう。
振り返ると、そこには薔薇の木があった。
にこにこしている女性は「○○」「○○」、
同じ言葉を私にむかって、何回もよびかける。
私が生まれて
一番最初に聞いた「音」。
今の私の記憶の中では
その女性はこう言っていた。
「カレンちゃん」、「カレンちゃん」。
カレン…、私の名前だ。
にこにこ私を見つめ、
私を宝物の様に扱う、
その女性は
私の母だった。
頬がベタベタしてたのは、赤ちゃんだった私の
自分のヨダレだった。
私が生まれてから、自宅に私と帰ってきた母は
私を抱っこして庭の薔薇の木の前で
写真をとった。
アルバムの一番最初に、今もある写真。
生まれたばかりで私は
愛も
何もわからなかったはずなのに、
抱っこしてくれていた母が
とても私を愛していることを感じた。