第8章 散り際
直三の志を叶えようとするように、
その知らせは しん太が両親に引き取られてから
すぐに しん太に届いた。
それは、内密ではあるが
いよいよ降伏しかなくなってきた、上皇の命で
高行様が敵軍と戦を構えようとしてるという。
知らせは、その戦への志願を募る物であった。
千長の戦もそうであったが、
今回の息子の高行の戦も必ず負ける戦であった。
余りに志願したがる者がおらず、
上皇の命で参加した者には多額の褒美を与えるとのことであった。
本人が戦死したら、家族に贈られるという。
直三は母親に「今までありがとう。」
といい、家をでた。
今更、裕福になることよりも
直三が生きていてくれることの方が母親は嬉かった。
でも、もう直三は
昔の辛いことから逃げる臆病な直三ではなくなっていた。
森の向こうに、また住みだした
しん太を少しでも守りたかった。
人の為死のうとしている人間ほど
強いものはない。
直三は城に着いた。