第5章 崩壊
Oside
視界がグニャリと歪んで、頬を伝う雫。
…あれ?
おれ、なんで泣いてんだろ。
ボロボロと何年ぶりかに泣きじゃくる自分を、やけに冷静に見てる自分がいた。
おれ、フラれたんだ。
あまりにもあっという間で、ひどく滑稽で、パタパタと涙を零しながら笑えてきた。
何も連絡がこなくても
どんなに避けられても
無視されても
俺って…、心の底から信じてたんだな…
なんておめでたいんだろう。
たった1日ぽっちの、
感触を。
幸せを。
愛を。
「バカだなぁ、おれ…」
…こんなに思いっきりフラれてんのに、それでもまだ信じてんだもん。
みっともなく、いつまでもグズグズと泣きながら、あの日から一度も入ってなかった寝室へ足を踏みいれる。
…幻みたいに消えてしまいそうで、思い出しては苦しくて入ることさえできなかった、あの日のまま止まった部屋。
今でも鮮明に、ここに横たわって、頬を染めて俺を見あげてたニノのこと思い出せる。
…いつから俺、こんなに女々しくなったんだろ。
俺はベッドのシーツも枕も、全部捨てた。