第5章 崩壊
Oside
ふるふると震えていたニノは、
俺の顔を見もせずに踵を返した。
スタスタと出て行く背中に、それでも話しかけ続ける。
今、離したらもう二度と戻ってこない。
「ニノ!
…あの夜はウソじゃなかっただろ?
俺はまだ、…ずっと、お前しか好きになれない。
…なんで、そんなに離れようとすんだよ。」
そう言うと、今にも部屋を出て行こうとしていた足がピタリと止まった。
なんで…俺たち、想いあってんのに。
やっと、通じ合えたのに。
「…あんなの本気にしてたんですか?
俺は別に…
あなたのことなんて、好きじゃない。
…早く諦めてください。
さよなら、大野さん。」
もうその瞳は潤んではいなかった。
つめたい…冷めた目で、俺を一瞥したニノは、顔色ひとつ変えずに出て行く。
まだ腕に抱きしめた感触が残ってるのに。
柔らかな唇も覚えてる。
だけど足が棒のようになって、ボンヤリと閉められたドアを見つめていた。
バタンと玄関のドアが閉まる音が頭の中に響いた。