第5章 崩壊
Oside
「…急に押しかけて、ごめんね。」
「いや……」
いつも座っているソファには腰掛けず、ラグの上にぺちゃりと腰を下ろして数分、無音の空間で妙にニノの声が大きく聞こえた。
「…今まで、ごめん。
どうしても…
……あなたのこと、見るのが怖くて。」
ずっと俯いてた顔を上げて、ニノは情けなさそうに、ヘラッと笑った。
”ごめん”
…ねぇ、それは何に対して?
そんなこと、臆病な俺は怖くて聞けないけど
…でも、嫌だ。
絶対に
…いや。
「…別れよう、大野さん。
……なんて、俺たち、付き合ってたわけでもないけどね笑」
何でもないみたいにふふっといつもみたいに笑うニノ。
…何でお前は、いっつもそうなんだよ。
何で全部、隠しちまうんだよ。
「じゃあ…本当、それだけ、言いにきたんで…
またね、大野さん。」
鈍感な俺にだってわかる。
「待って。
…もう、俺にウソつくなよ。」
「…何の話ですか。
離してください。」
立ち上がったニノの腕を掴んだ。
振り払うでもなく、だけど振り返りもせずに、笑い声を含んだ声で冗談めかして言ってるくせに…
なんでそんなに、手が震えてんだよ。