第5章 崩壊
二つ折りになっている、手のひらサイズの小さな紙。
淡い黄色に飛び散る赤が事故の凄惨さを物語っていた。
「3人で一緒に送ってもらってて、松潤が花屋に寄ってほしいって…
それで、ちょうど松潤が花束を抱えて出てきた時に…
…赤い、バラの花束だったよ。それに、コレはついててさ、花はグチャグチャになっちゃったけど…」
赤いバラ…
紙を持つ手が震えた。
…だって翔ちゃんの話じゃ、多分、その花束は。
『2ヶ月記念。
俺のこと選んでくれてありがとう。
愛してる。』
俺のため。
俺に、贈るつもりだった。
潤くんは、俺のために…俺の、せいで。
その時俺は何をしてた?
潤くんが、苦しんでいた時。
俺は、大野さんと…
「ニノ…」
翔ちゃんの手が、俺の頬を拭った。
ポタポタ、涙が溢れて止まらなかった。
全部、俺が悪い。
俺がグダグダと悩んではっきりしなかったから。
ケジメもつけずに、俺が流されたから。
…いや、流された、なんて。
俺は分かってた。
潤くんにも、大野さんにもこんなのダメだと分かっていながら俺は自分の欲求を抑えきれなかったんだ。
いくらでも逃げようと思えば逃げられたし、止めてくれた。
俺は自ら望んで、潤くんを裏切ったんだ。