第1章 始まり
mside
平静を装っても、どうしても緊張が滲み出てしまうんだろう。
勘のいいニノは、何か話があると勘付いているみたいだったけど無理に聞き出すなんてことは絶対にしなくて。
俺のどうでもいい話に可愛らしく笑っては、薄っすらと赤みを帯びた色っぽい顔を俺に向ける。
俺はもうそれだけで体中の温度がカーッと上がってしまって、結局約2時間、約束の時間まで何も話すことはできなかった。
「ん…じゃあ、もうすぐのシンデレラの魔法も解けちゃう時間ですし、俺はそろそろ帰りますね?」
自然と会話が途切れた時、ゆったりと時計に視線を向けたニノがフワフワとした口調でタイムリミットを告げた。
これじゃ、今までとおんなじだ。
「ちょっと、タクシー呼びますね?」
そんなの
「待って。」
イヤだ。
「え……」
ニノのタクシーを呼ぼうとする左手を掴んだ。
驚いたニノの手からすり抜ける携帯。
その音が、やけに大きく聞こえた。