第3章 交錯
Oside
松潤に呼ばれたのは、如何にも芸能人御用達といったようなオシャレな個室居酒屋。
少し路地に入って奥はただの行き止まりかと思ったら、左側には知らなきゃ通り過ぎちゃうくらい地味な木の扉。
古めかしい扉とは対照的に、中は暗いオレンジに染まって落ち着いた雰囲気だ。
少し早く着いてしまった俺はいつも決まった店にしか行かねぇから何となく緊張してしまう。
…まぁ、緊張するのはそれだけのせいじゃないけど。
「ごめん大野さん、お待たせ。」
「いや……」
「先に飲んでてよかったのに笑
じゃあ、ひとまず生でいい?
あと…なんか軽く食べる?」
「いや……いい。
…松潤、なんか話あんだろ?」
早く、本題に入りたい。
…鈍い俺でも、ここ最近の楽屋の様子を思い浮かべれば何の話かなんてわかりきってた。
「……俺、ニノと付き合ってる。」
「…うん。それで?」
「…驚かないんだね。」
苦笑する松潤。
「驚いてるよ。」
本当に。
…ただ、なんかからっぽになった。
今まであった重くて、暗くて…少しだけ甘かった何かが、急にストンとなくなった。
自覚しちまうくらい、それは俺の心ん中で膨張してギュウギュウで居座ってたから…虚空に投げ出されたような、感覚。
ただただ、なんにもなかった。
松潤が、ニノのこと好きなんだろうなとは思ってた。…けど、2人が想いあってるとは不思議と思わなかったんだ
…今思えば、そんなの、俺の都合のいい希望的観測だったんだなぁって、どこか他人事のような自分がいた。