第3章 交錯
Nside
急に引き寄せられて傾きかけた体は潤くんの逞しい腕に受け止められる。
グッと耳元に寄せられた唇。
「…俺に会いたかったんだろ?」
「………っ!」
急激に顔が熱くなる。フ…ッとかかった吐息のせいで背筋にゾクゾクがせり上がる。
見上げた顔は自信満々で俺様で……嬉しいが滲み出た顔。
だからもう、俺は何にも言えなかった。
「……ニノから誘ってくれるなんて、珍しいね?
…嬉しかった」
一度俺の顔を見た潤くんは少し顔を赤くして、次の瞬間には意地悪な潤くんはいなくなって、ちょっぴり眉尻を下げてはにかむ潤くん。
おでこにキスをして気をつけてね、って出ていく潤くんの背中を見ながら、俺はついに我慢しきれなかった。
「……違うんだよ、潤くん…」
家以外で、いや…そもそも自分のことで泣いたのなんて、何年ぶりだろう……
一筋、涙が頬を伝っていた。
潤くん、俺は……あなたを裏切ろうとしてるんだよ…
優しい潤くん。
カッコいい潤くん。
誠実な潤くん。
可愛い潤くん。
涙もろい潤くん。
…俺のこと好きでいてくれた潤くん。
潤くんのこと、好きになれたらよかったのに