第2章 甘くて苦い
スルスルと頬を撫でられる感触。
優しく優しく触れるその温もりに、まどろみの世界から呼び戻される。
半分現実で、半分夢。そんな曖昧な意識はフワフワ、フワフワ気持ちいい…
この手の主を分かっていたけど、まだこの世界の狭間で揺れていたくて、わざと目を開けなかった。
「………知らねぇかんな」
ハッキリと覚醒しない頭で微かに聞こえる、掠れた声。…何だかその声がひどく切なく聞こえて、薄っすらと目を開けてみた。
「……せっかちなお姫様だなぁ…」
そう言ってクスリと笑った潤くん。
妖艶な笑みを湛えたその顔は驚くほど近くて、吐息がかかるくらい。
耳元で囁かれた言葉の意味を理解してしまった俺は、思わず笑ってしまった。
だってあんまりにも潤くんに似合いすぎる設定でしょ?
ふふ…いいよ?
寸止めさせられた王子様のために、もう一度眠りについてあげる。
「ん……」
目を再び閉じると同時、降ってきた王子様からのキス。
「ふふ…っ待ちきれなくて、目がさめちゃった…?」
王子様らしく、優しいフレンチキスを落として微笑む姿は悔しいくらい様になってる。
…けど、残念。
「んふふ…っ
……でも俺、お姫様じゃないもん…王子様にキスされなくても、自然の摂理で目が覚めます笑」
…お姫様は、愛する人のキスで目が醒める。