第2章 甘くて苦い
「ハハッ!ニノらしいね…」
俺の全く可愛くない返事に王子様モードは解けて、潤くんが笑う。
…ごめんね。ただのお遊びでも、頑固な俺は潤くんのお姫様にはなれなかった。
どこまでもまっすぐな潤くん。
捻くれた俺の言葉のウラ側なんて、きっと見えていないし見せたくもない。
…けれど優しく笑うその笑顔がいたくて、胸をジクジク蝕んでいく。歪んだ俺には眩しすぎる潤くんは、今日もナイフを振り上げる。
「ねぇニノ、好きだよ………」
覆いかぶさっていた潤くんが俺を抱きしめる。
顔は見えないけれど、いつも俺を呼ぶ甘い声が、どんな顔をしているのかなんていとも容易く見せてくれる。
…きっと絶対、愛おしくて仕方ないって、あの綺麗な瞳で微笑んでいるだろう。
「…………ありがとう…」
俺も腕を回して潤くんに抱きついた。
…言葉とは裏腹に。
今俺はどんな顔をしてるかな。
だけどきっと、優しい貴方に見せてはいけない顔をしているね。
それぞれ抱える気持ちはきっと真逆。けれどそれぞれの理由でそのまま抱き合う俺らは何て滑稽なのだろう。
好きだという返事を強要しているわけじゃない。焦っているわけでもない。急かしてるわけでもない。
ただ、好きだという気持ちを伝えたいだけ。
…潤くんの純粋な想いは毎日毎日、俺の心臓を少しずつ削り取る。