第2章 寮生活ひと月め☆
ああ、今日も来てる。
銀さんといっつも一緒にご飯食べにくるんだよなぁ。この人。
グラサンをかけた、30代くらいかな?長谷川さんという方です。
でも、鬼になれませんでした、私には。
「いつも悪いね、お嬢ちゃん」
そう言ってにくじゃが定食を実にうまそうに食べるのだ。
「うめえよ、うめえよぉ」
ときどき泣きながら食べているときもあります。
…人生ってなんなんでしょうね。
私は居間でごはんをかきこんでいる長谷川さんの背中を見ながら考えた。
私ごとき小娘にかけられる言葉はなかったので、とりあえず毎日一人分、ごはんを確保することにしました。
(これも着服になるのかなぁ)
それでも、鬼になれません。
「よぉ寮母さん、朝早いんだな」
少し早く起きた朝、さすがに運動不足だと思った私は散歩をすることにしていたのですが、この日は珍しく全蔵さんにあった。
「あ、全蔵さん。新聞配達もやってるんですか?」
「ああ、ピザ屋と掛け持ちでね。
何かしてないと落ち着かないんだ」
そう言って、後ろから来ていた全蔵さんにあっという間に追い抜かされ、その後姿もあっという間に小さくなった。
「あ~元気だなぁ」
その後姿を見送っていると、
「ふぅぅぅぅ~」
と誰かに首もとに風を吹きかけられた。
「ふぎゃ!」
悲鳴を上げてそちらを見ると、そこにいたのは、土方さんと同室の沖田さんだった。
首が ぞわ ぞわ するーーーー!!!
体中に鳥肌が一斉に出て、髪まで逆立つんじゃないかってくらい、ぞわっとした。
「毎回良い反応ですねィ。寮母さんの性感帯発見でさァ」
これって、これって性感帯ってやつなの!???
「この…ぞわぁってするのって、性感帯だからなの?」
首の後ろを押さえながら、涙目で沖田さんに聞くと、
「寮母さん、朝から青少年を誘惑したらいけませんぜィ。いままで聞いたセリフの中で、一番キましたぜ」
そう言って、私の首筋を鎖骨のラインまで中指でなぞり、そのまま登校して行った。
す、末恐ろしい子!!