第3章 入寮二ヶ月め☆
「宮部です~、土方さ~ん」
ノックの後、そう呼びかけた。
するとドタバタ物音がして、土方さんがドアを開けてくれた。
「夜遅くに悪いな」
そう言って中に通してくれた。
相変わらず二人とも部屋をきれいに使っている。
そして見事に黒いガムテープで国境が引かれている。
国境を巡る長い争いが行われているというのは周知の話w
「実は頼みたいことがあってな…」
座布団に座ると、土方さんが話し始めた。
次の瞬間、ズザーーーーッと沖田さんが座布団に座ったまま国境を侵入してきた。
「こら総悟!何度言やわかるんだ、お前からこの国境の話を始めたんだろうが!!!」
「土方さん、俺も寮母さんに用があったんで、ちょうどいいと思ってお邪魔させてもらっただけですぜィ。じゃァなんですか?寮母さんに二度手間かかさせればいいってわけですかィ?」
沖田さんの悪びれた様子のない言い方、しかも反論のしようのない言葉に、土方さんはただ、ため息をついて黙るしかなかった。
「明日、もし用がなければ一緒に付き合ってほしいところがあるんだが」
と土方さんの言葉が言い終わる前に沖田さんが、
「ああ、却下ですねィ」
「なんでおめえが答える!!!」
「俺の意見じゃねェですぜ。
寮の《総意》というやつでさァ」
「「総意?」」
私も土方さんも意味がわからず聞き返すと、沖田さんはおもむろに机の引き出しを開けた。
そして分厚い冊子を私たちの目の前に置いた。
制作・志村新八とあり、署名もどうやら寮の全員分とったらしく、表紙に書かれていた。
そして、一ページ目をあけた瞬間、衝撃的なことが書かれていた。
『寮母さんの操を守る会』
「な、なんですかこれはぁぁぁ!!!」
「健全な寮生活を送るためのバイブルだって新八くんが」
私の知らない水面下でこんなものが作成されていたとは!
パラパラと読んでいると、A4用紙にもうびっしりと寮中法度が書かれていた。
「寮中法度第37条、『寮母さんと二人でデートをした者(誘った者)は切腹』。土方、切腹しろィ」
「デートじゃねぇし!切腹もしねぇよ!!」
私、この寮にいる限り、恋愛できなそうな気がする…(泣)