第2章 寮生活ひと月め☆
そういえば、男性の後ろに乗るって初めてだ。
「?
つかまらないと、乗れないぞ」
わかってますよ、わかってますけど…ええのんか?ほんとうにええのんか???
数秒逡巡したあと、おずおずと銀さんの腰に片腕を回した。
銀さんはそれを確認し、エンジンをかけ加速した。
あ、ちょっと怖いかも。
私は控えめだった腕に力をこめて、両腕で腰を抱きしめる感じになった。
タバコのにおいと、なんだかお菓子みたいな甘いにおいがした。
どきどきして何も話せなくて、ただ周りの景色をぼんやりと眺めているしかできなかった。
「寒くないか?」
しばらく走った後、信号待ちで尋ねてきた。先ほどとは打って変わって優しい声だった。
「…さ、寒くはない」
抱きついてるので暖かいです、とはさすがに言えず、ぶっきらぼうに答えてしまった。なんか申し訳ない。
銀さんの後ろに乗ること20分。
少し大きめのショッピングセンターについた。
イメージ的には少しお高めのイメージがあるけども、新鮮な物が多かった気がする。
さっそく食料品売り場に行こうとすると、銀さんがハシッと私の袖を引っ張った。
「なんですか?」
私の問いかけには答えずあさっての方向に歩いていく。
「え?ちょ・ちょっと」
そしてたどり着いたのは、ファミレスだった。
ご案内に来たウェイトレスのお姉さんに「イチゴパフェね~」と言って、なれたように席に座った。
「あの、銀さん?」
「お前、もってんだろアレ」
「アレって何?」
「坂本名義の魔法のカードだよ」
こいつ…
それが狙いかぁ!!
「だめですよ!ぜったいだめですからね!領収書もらってちゃんと報告してるんですから!」
「それって、坂本からの指示なの?」
「いや、ちがいますけど…
これって着服になりますからね!」
「領収書に関しては俺に任しておけば大丈夫。銀さん頼りになると有名なんだ」
何に関して頼りになるんだ、何に関して。
「もう!それでも教師かーーー!!」
結局銀さんパフェ食べちゃった。
どうしよう。私が立て替えておこうかな…。正直に言えば大丈夫かな。心配。