第2章 寮生活ひと月め☆
あまりにも接近したため、湯飲みを落としてしまった。中身をこぼしながら、ころころと転がって行く。
「あっ」
拾おうと手を伸ばした刹那、その手を掴まれた。
やさしいきれいな手をしていた。
「寮母殿」
もう一度呼ばれて、私は九兵衛くんの目を正面から見ることになった。
鼓動が高鳴って、息も苦しい。
でも、目をそらすことができない。
そして、私の手をグイッと引いて自分の胸元に持っていった。
これはまずいこれはまずいと思いながらも、身じろぎできずに固まっていると…
むにゅ
触りなれた感触を右手に感じた。
「え?」
一瞬頭が真っ白になって、九兵衛くんを驚愕のまなざしでみつめた。
すると、頬をそめて、それはそれはかわいらしい顔をして、
「…秘密にしてくれるか?」
と言った。
えええええええええええええええEEE
思わず、揉みしだい(自主規制)
「僕はどうしても跡取り息子として生きていかないといけないんだ。
そのためにも、どうしてもこの学校に行きたかった」
「そ、それで男性のフリをして男子校ライフを送っているのですね」
衝撃的な秘密だった。
でも、一度分かってしまえば、たしかに女の子にしかみえないや。
「でも…。誰かに知っていてほしい。だから君に話した。すまない、こんなこと話されても、迷惑だったと思う」
悲しそうな、すがるような目をされた。
辛かったんだろうな、と思う。マイノリティーな悩みがあるのか、女性として生きることができない悩みがあるのかはわからないけれど、一人で抱えて、みんなに隠して生きていくのは並大抵のことではないと、思った。
「ぜったいにダレにも言いませんよ。卒業まで、二人だけの秘密です。なにか、たいへんなことがあったら、いつでも相談しに来てくださいね!」
打ち明けてくれたことが、とにかくうれしかった。
こうして九兵衛くんと仲良しになれました!