第2章 寮生活ひと月め☆
銭湯から出ると、すでに土方さんが外にいた…山崎さんを背負って。
「あれ、山崎さんのぼせちゃったんですか?」
山崎さんの顔を覗き込んでみても意識がないらしく、反応はない。
「いや、あー…。銭湯、壁、薄かったな…」
土方さんは言いにくそうにそう言った。
まあ、古いからしょうがないでしょうね。それと山崎さんののぼせようは何か関係があるのでしょうか。
アパートへの道を二人静かに歩く。
なんだろう。会ったときはイケメンイケメン!って感じで緊張してしまったけど、沈黙しても気まずくないや。
土方さんは、どう思っているんだろう。何か話したほうがいいのかな?
そう思って、そっと土方さんを見上げると目が合ってしまった。
少し驚いて、何か言おうとしたが、大して気にした様子もなく、土方さんは目をそらした。
うん。何も話さなくてもいいのかも。
アパートにつくまで、結局一言も話さなかった。
「おい、九兵衛いるか?」
土方さんが、山崎さんの部屋のドアをたたきながら、ルームメイトに声をかけた。
「こんな時間に。
どうしたんだ?山崎くんは体調を崩したのか?」
中からは片目に眼帯をつけた小柄な少年が出てきた。
とにかくこの子が、ものすっごい美少年。
思わず見とれていると、
「これはこれは寮母殿ではありませんか!ご挨拶がおくれて申し訳ない!どうぞ狭いところですが、あがっていってくだされ」
と、たいへん礼儀正しい子でした。
お言葉に甘えて中に入ると、八畳の部屋の真ん中にしっかりと…しすぎるほどの仕切りが増設されていた。しきりが鋼鉄でできているようなかんじ。
「ああ、これは…。家の者が心配して勝手に作った物なんだ。狭くなってしまって、山崎君にもたいへん申し訳ないと思っている…」
そう言いながら、お茶を入れてくれた。
とりあえず山崎さんのおふとんを敷いてあげて寝かせ、土方さんを見送った後、九兵衛くんからお茶をいただいた。
「寮母殿…」
ちゃぶ台の真正面に座っていた九兵衛くんが立ち上がったかと思うと、私のすぐ隣にひざをついて座った。