第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
…ーいつもあの星は雨が降っていた。
私は傘もささずに、家の裏の窓の下で母さんと神楽が家の中で話しているのを聞いていて。
他愛もない親子の会話。幼い神楽は少し大人びていて、母さんの世話もこなしていたけれど、会話を聞けば年相応の甘えたがりの少女だった。
純真な妹に比べて、早いうちから素行不良に走った私はそんなふたりの親子の会話に混じるのが気まずくて、こうしていつも家の外から盗み聞きをしては、家にやってくるクズを追い払って、それだけで家族の一員になった気分でいた。
家に帰っていたのは飯を食う時と寝る時だけで、あとは外で過ごしていた。それでも神威も神楽も帰ってきてとせがんでくれて、たまに帰れば母さんも父さんも何も言わないでいてくれていた。
いつまでもその暮らしが続けられるなら、どれほど幸せだっただろう。
結局家族は、バラバラになってしまった。目に浮かんだのは母さんの死に際だった。
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頭がとてつもなく重たい。頭だけではなく全身がヒリヒリと傷んでいて、起き上がろうとすると、肌が全て電撃が走ったように痛む。
起き上がることを諦めて、横目で状況を把握するが部屋が暗い上に寝起きで目もよく見えない。
私…かぶき町に向かうために船が停泊した途端に飛び出して……。
……すぐに迷子になった…んだっけ…。
地球に降り立った瞬間に感じたのは激しい太陽の熱と気温だった。
もしかして…と考えているとガラガラと何かが引きずられる音がした。
「…あっ!お目覚めに…!せっ…先生呼んできますね…!」
女性の声が聞こえたと思ったらパタパタと走り出してしまう。せっかく話が聞けそうだったのに。
ついでに部屋にツンと鼻をくすぐる匂いが漂ってくる。遠くではアナウンスが響く。直感と嗅覚だけで、ここは病院だと感じとった。
「…あーあ。まさか地球に来て最初の観光地が病院って…。」
誰に言う訳でもないが、愚痴っぽく小言を零した。
「お目覚めになられましたか?」
またスタスタと足音が近づいてきたと思ったら、今度は男の声だ。足音は2、3個あって1人では無さそうだ。さしあたり先程の女の声は看護師か何かで、着いてきたのか。
「いやぁ、良かった良かった。貴方、地球の方ではないです…よね?丸2日も身元も分からないまま眠られていたので、こちらも焦りましたよ。ハハハ。」