第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
「神楽ちゃん、瑠樺さんの言う通りここでお姉さんのこと信じて待ってあげよう。ね?」
「…まぁ、ヅラ(アイツ)もいる事だし、何とかなんだろ。それに、テメーの姉貴はそんなヤワじゃねーだろうよ。」
万事屋の2人は神楽に励ましの言葉を投げる。神楽は随分思い悩んだようだが、意を決したように声を出した。
「…絶対、無事にここにこさせろヨナ。私、ケガ人を引っぱたくような趣味はないネ。」
またニヤリと笑みを浮かべ、瑠樺に思いを託した神楽。
その思いを受け取るかのように瑠樺も柄にもなくニヤリと包帯の下から笑みを零した。
足早に万事屋を後にし、船への足取りを進める瑠樺。
瑠樺は戦いにも長けてはいるが、それよりも情報処理が上手く、各地の星の、特徴 文化 民族性などを調べることを得意としていた。
異境の星に行けば、謎の生物や文化に出会うことも少なくはない。その星と繋がりを持つために来星していく志節団にとって、瑠樺のような知識担当は貴重な存在であった。
先ずは、志節団の船にある資料を漁ることが先決であると考えた瑠樺は、ひとまずターミナルへ帰っていく。
走りながら向かう道すがら、瑠樺は神楽のことを思い出していた。
夜兎族というのはそもそもの個体数が少ない。また、
戦闘本能によって仲間意識も少なく、出会ったところで何も感じないのが常だった。
しかし、瑠樺は神楽と会った瞬間、神経が凍りつく"何か"を感じた。
(まるで神恵さんと初めて会った時みたいだ…。)
それは運命だとか、天からの巡り合わせなどではない。夜兎としての凄まじい強さ。本気で戦えば"殺られる"
それが殺気立っていない時でも伝わる人物。
(…やっぱり、姉妹かぁ。…羨ましいな。)
これが同じ宇宙最強の血を引くものの特徴だろうか、と少し苦笑いをする。
(それにしても、その暴れ馬を飼い慣らす万事屋のあの二人。あれも異質だった。だけど本当に、家族みたいな人に出逢えたんだな。神楽さんは。)
少しの間だけしかいなかったが、万事屋の3人を結ぶ絆がほんの少し、家族のいない瑠樺には身に染みて伝わっていたのだった。
少し寂しい昼過ぎの西日を瑠樺は眩しそうに傘で防いだ。