第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
「店主さん!ごめんなさい!そのバーチ〇ルボーイ取り置きしておいて下さい!後で必ず買いに来るので、とにかくこのネズミの行き先を調べに行きます…!」
両手に持っていたソフトの紙袋をそっと置き、神恵は携帯と大事をとって傘に手をかける。
何かトラブルがあると首を突っ込まずにはいられないのが神恵だった。
店主は混乱しており空返事のみを返し、神恵はそのままネズミが行く先を追いかけていく。
とてつもない速さで電気街を通り抜けていくネズミたち。それに食ってついていく神恵だが、いかんせんどうも狭い路地ではあまり派手には動けない。しかし、長年戦いで培ってきた第六感が見事に発揮されスイスイとネズミを追いかける。
幸いなことにこの真っ暗闇では、光るものほど目立つものは無い。それもどんどんと後継のネズミが来るため、見失うことは無かった。
「神恵殿!俺も助太刀するぞ!」
随分と先に進んでいた神恵に遅れは取ったものの、忍び顔負けの自慢の素早さを活かし桂が追いついてきた。
『うわっ!喋るネズミ!?』
「ネズミじゃない桂だ!貴様もう恩人の声も忘れたのか?!」
暗闇の中後ろから自分を呼ぶ声にびっくりしてしまい思わず止まってしまう神恵。まさか追いかけてきて、しかも障害物の多いこの路地で自分の速さに桂が追いつけるとは思ってもいなかったためである。
「またお主1人でどこかに行けば迷ってアキバから外に出られなくなるだろう。…それにあのネズミ、地球の生き物ではない。どんな害があるか分からぬ。そんな所に女子一人を行かせる訳には行かんだろう。」
暗闇で全く様子は見えないが、桂は心配でそのまま神恵を追いかけてきてしまった。
(…この立地でここまで早く追いついて来る上、冷静でいられる判断力。この人只者じゃない。)
仕事モードが完全にONになっていた神恵はまた第六感でそう感じた。
『…背中は預けました。』
神恵はそう言い放つ。神恵の顔もまた桂にはほとんど見えていないが、先程あったばかりとは思えないほどに二人の間には信頼感が生まれていた。
そのまま2人はネズミを追いかけ始めた。