第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
「お二人さん、婚約ゲームをお探しかい?」
神恵は唖然と店のゲームを眺めていると、奥から店主らしき人物が1人やってきた。白い髭をたくわえ、小さな老眼鏡をかけた背の小さい老人である。
「いやぁそのゲームに目を付けるとは、お二人さんオメガドライ〇が高い。」
『すみませんわかりにくいんでやめてもらっていいですか、お目が高いとメガドライ〇掛けるの。ってか婚約ゲームってなんですか!聞いたことありませんけど!』
神恵のツッコミをもろともしない店主は続けた。
「そのゲームはね、かの有名な弁天堂が出した黒歴史とまで言われるいわく付きのゲーム機でね。通信や二人で遊ぶことも出来ないし、夫婦初めての共同ゲームにするにも婚約ゲームにするも、ちと悪名高すぎるんじゃないかなぁ。」
『いや何一つ間違ったことは言ってないけども!つーか初めての共同ゲームってなんだ!夫婦初めての共同作業みたいに言わないで!ただのゲーマー夫婦じゃん!!』
"婚約ゲーム機"という言葉が通じなかった店主は少し不思議そうな顔をしており、全く神恵のツッコミが通じていない。
神恵は店主に事情を説明した。たまたまそこであっただけの人間であることと、ゲーム機を探していることは間違いないということ。
やっと理解してくれた店主に対して、はぁ、とため息をついた神恵。ふと目をやると桂はまだショーケースに張り付いたままだった。
『…つかぬ事を聞きますが、バーチ〇ルボーイが新品未開封で売ってるってすごいですね。しかも在庫ありますってポップに書いてありますけど…。どこでそんな手に入れたんですか。コレクターからしたら垂涎ものじゃありませんか。』
「それには背筋も凍るようないわく付きの理由があってな…。バーチ〇ルボーイが発表された当初、斬新なコンセプトに惹かれて爆発的ヒットをすると思っていたんじゃ。しかしそれが大誤算でな。今じゃこうして在庫を抱えたまま眠っとるというわけじゃ。」
『すごい。思ってたよりほんとにいわく付きの理由だった。主に現実的な売れ行きという面では背筋が凍る。』
冷静に分析しながら語る店主と、桂の横からバーチ〇ルボーイの箱を眺め始める神恵。本当に開けた形跡がなく、紛い物でもなさそうでこれが当時とほとんど同じ価格で売られていることに驚愕していた。