第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
「………私は夜兎族の者で…地球には…か…観光的な…?行く宛てもあるので大丈夫です。…その、もし良ければ包帯だけ恵んで頂けませんか。巻いてくるの忘れちゃって。あと水も…。」
父さんが、地球に行く時は傘だけじゃ日除けが出来ないから包帯やマントで目を包めと口酸っぱく言っていたのを今更痛感する。まさかここまでとは思わず、改めて神楽の健康が心配になってきた。
看護師が横から、包帯を差し出してきた。私は豪快に点滴の針をぶち抜き、そこからくるくると包帯を巻き始めた。ここで道草を食っている場合では無いのだ。その様子に医者はドン引きしているようだったがそんなことはどうでもよかった。
もう1人の看護師が部屋の冷蔵庫から水を取り出してきた。巻きかけの包帯もそこそこに、私はその水を一気に飲み干すとすっかり頭も冴えてきた。
続きの包帯を腕と首元に巻いて、早々にベッドからおりる。
「…いや何ちゃんと出かける用意してるんですか…?まずは医療費と身内の方へご連絡を…。」
アワアワとしている医者と看護師に私はニヤリと微笑む。
「改めて、世話になりました。医療費…?なんのことだか分からないんですけど、とりあえず"つけ"といてください。」
そのまま私は薄暗い部屋のカーテンを開けて窓も開ける。日は沈み掛けの西日と言うやつだが、包帯をして傘もひらけば今日は来た日よりなんてことは無い。地球における季節の春に来たんだから、暑かったあの日がおかしいのだ。
下をちらりと確認すればまぁ階数は3階程度だろうか。余裕余裕。
そのまま身を乗り出す。とっととこんなところは去って、早く神楽の元に…!!
「んーじゃ、また会う日まで〜〜!」
「チョットォォォォ!!!病院でそんな!!!ツケなんて無いですからァァァ!!!コラ待て天人ーーー!!!!!!」
なんか叫んでるな〜。聞こえないふりしておこう。私はとにかく、進むだけだから。残り5日間、どうにかして地球を楽しむのだ。