第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
とはいえ、丸2日寝ていた上に団との連絡も滞ってしまっているわけで。
幸いなことに、私たちの船があるのはターミナルという江戸のどこにいても見上げればすぐそこに見える建物にある。最悪迷っても、ターミナルの方面に向かえば何とかなった。
神楽の居候先もこれくらいわかりやすかったらいいのになぁ…。
まさか数年ぶりの再会で「お姉ちゃんなんか汗臭い」なんて言われてしまったらもう一生立ち直れる気がしないので、今日のところはひとまず船に忘れ物を取りに行きつつ、体制を整えることにした。
すっかり病院で体力も体調も回復し、西日もだんだん消えてきて街の灯りがともるようになってきたら、いよいよ夜兎の私は元気が出てくる。江戸の町をキョロキョロと眺めるのもそこそこに、私はターミナルへと足をはやらせた。
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「…えっと、馬鹿なんですかあなた。」
「自分でもそう思うよ。」
三つ編みを編み直す私に、とてつもない形相でお怒りになってるのは瑠樺だった。船員はほとんど船に残っておらず、今頃江戸の夜を楽しんでる頃かと思っていたら、瑠樺だけはここにいた。
「着いたと思ったら突然船から飛び出すし?携帯も財布も持っていかないし?挙句の果てに迷って倒れて病院で医療費も払わず帰ってくるって、普通に犯罪級のアホですよ。医療費に至っては全然犯罪ですし。」
正論を並べる部下を尻目に気まづく笑うしかない私。今になってことの重要性を痛感しだしている。
「…全く。どれだけ部下の胃を痛めつければ気が済むんですか神恵さん!私は地球の食べ物をありったけ食べてただでさえ胃もたれしてるのに…。」
「それ、自業自得じゃない?」
「言い訳しないでください!!!大江戸病院ですね…。明日私がきっちり医療費払ってくるので、神恵さんは……早く妹さんに会う準備でもしてください…。これ以上待たせたらまた嫌われますよ…。ったくもう。」
瑠樺はなんでも知っている。私が妹に会うのをずっと楽しみにしていたことも、内心妹に会うのが少し怖いことも。私より年下の彼女はよっぽど私より"大人"であった。